現在、地球温暖化などの環境問題、化石燃料などエネルギー供給の逼迫など、地球規模で解決しなければならない問題に直面しています。これらの解決は一朝一夕にはなりません。しかしながら、将来世代へ負の遺産を残さない持続可能な社会(Sustainable Society)の実現へ向けて、少しずつでも歩みを進める必要があります。我々の研究室では固体の中をイオンが動く現象を科学する「固体イオニクス(Solid State Ionics)」を利用した環境調和型デバイスの研究・開発を通して、これらの問題の解決に貢献していきたいと考えています。

 実は、我々の周りには既に固体イオニクスを利用した製品がたくさんあります。例えば、自動車の排気ガスをクリーンにするための制御用酸素センサーは殆どの車に実装され、排気ガスの清浄化に欠かせないものとなっています。また、エネファーム(Ene-farm)として商品化されているクリーンな発電デバイスである家庭用燃料電池にも固体中をイオンが動く膜(固体電解質)が使われています。携帯電話、ノートパソコンなどのモバイル情報端末や電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)は、蓄電池としてリチウムイオン二次電池がないと成り立たず、我々の生活はイオン導電体を応用したデバイスに大きく依存していることが分かると思います。

 中四国地方で固体イオニクスに取り組んでいる大学の研究室は限られると思いますが、同分野での研究開発や学びに興味を持っていただ企業、学生の方はぜひ当研究室の門を叩いて頂ければと思います。

環境・エネルギー分野の課題解決と固体イオニクス

 環境問題、エネルギー問題を解決し、持続可能な社会を実現することは、21世紀の研究者・技術者に 課せられた大きな課題です.我々の研究室では、これらの問題の解決に資する、燃料電池/電解セルや蓄電池など環境にやさしいエネルギー変換デバイスの実現・普及のための基盤研究を行って います。特に、固体でありながらその中をイオンが高速移動できる「固体イオニクス材料」に着目し、 イオン輸送、界面反応、欠陥構造についての学理を探求すると共に、それに基づく機能設計、材料開発を 行っています。また、固体イオニクスデバイスにおける材料、反応に関わる理解を深化させるため、 使用環境下でのその場測定を可能とする分析技術の開発も行って います。 これらの研究を通し、固体イオニクス材料を利用した環境調和型エネルギー変換デバイスの開発ならびに高性能化・高信頼性化に取り組んでいます。

Fig. 環境調和型エネルギー変換デバイスに関わる固体反応,固体内・界面イオン移動現象